複数の拠点で、スタッフがお客様のもとへ出向く訪問型のサービスを提供している会社のお話です。スタッフの勤務表(シフト)はきちんと作られていました。訪問の実績も記録されていました。ところがこの二つが結びついていなかったため、「誰がどれだけ訪問をこなしているか」「どの拠点が大変か」は、現場の感覚でしか語れませんでした。今回は、新しいシステムを一切入れずに、この“忙しさの偏り”を数字にした事例をご紹介します。
- 勤務表と訪問実績のデータをつなぎ、「出勤1人あたりの訪問件数」を拠点別・月別に自動計算した。
- 新システムの導入もプログラム開発もなし。表計算ソフトの標準機能だけで、追加費用はゼロ。
- 最大の壁は日付の形式や曜日の表記ゆれなど、データの「そろっていなさ」だった。
- 忙しさの偏りが感覚から数字になり、シフト作成や振り返り会議の根拠として使えるようになった。
課題:勤務表はあるのに、忙しさは感覚のまま
勤務表と訪問実績は、それぞれ別のデータとして管理されていました。どちらも存在しているのに、突き合わせて見る手段がなかったのです。
- 「誰が何日出勤したか」は勤務表に、「訪問が何件あったか」は実績データにあるが、二つがつながっていない。
- そのため「あの人ばかり忙しいのでは」「あの拠点に負荷が寄っている気がする」が、感覚以上の話にならない。
- シフトを組む側も、根拠となる数字がないまま経験と勘で調整するしかなかった。
やったこと:既存のデータ同士を“つなぐ”だけ
確定した勤務表のデータと訪問実績のデータを結合し、「出勤1人あたりの訪問件数」を拠点別・月別に自動計算して、いつでも振り返れるようにしました。ポイントは、新しい仕組みを何も作っていないことです。
- 使ったのは、すでに社内にある表計算ソフトのデータそのもの。新しいシステムは導入していない。
- 別ファイル参照(別のファイルの中身を読み込む機能)と検索関数(表の中から条件に合う値を探し出す機能)という標準機能だけでつないだ。
- プログラム開発なし、追加費用なし。一度つなげば、以降は自動で計算される。
つまずいた点
- 日付の形式が二つのデータで異なっていた。片方は日付型(表計算ソフトが日付として認識している値)、もう片方は文字列(ただの文字の並び)で、見た目は同じでもそのままでは突き合わせできなかった。形式をそろえる一手間が必要だった。
- 曜日の表記がブレていた。漢字1文字で書かれている箇所と「◯曜日」と書かれている箇所が混在し、そのまま集計すると数字がずれた。
- 月ごとにシート(ファイル内のタブ)が増えていく運用だったため、参照先を毎月手で直すのでは自動化にならない。新しい月のシートを自動で追いかける工夫が必要だった。
結果
「誰が忙しいか」「どの拠点に負荷が寄っているか」が、感覚ではなく数字で見えるようになりました。シフトを組む際には偏りを直す根拠として、振り返りの会議では共通の物差しとして使えるようになり、「大変そう」という印象論の議論から一歩抜け出せました。データは以前からすべて手元にあったものです。変わったのは、つないだかどうかだけでした。
この型が使える会社
- 勤務表と業務の実績が、別々のファイルや表で管理されている会社。訪問に限らず、配送・施術・営業など「人が件数をこなす」仕事全般に当てはまります。
- 忙しさや負荷の偏りが、数字ではなく現場の感覚で語られている会社。
- システム投資の予算はないが、表計算ソフトのデータなら手元にそろっている会社。
新しいシステムを買う前に、手元のデータ同士をつなぐ。忙しさの見える化は、表計算ソフトの標準機能だけでも十分に始められます。
「見える化」と聞くと、専用ツールの導入を思い浮かべがちです。しかし多くの会社では、必要なデータはすでに社内にあり、足りないのは“つなぎ”だけということが少なくありません。日付の形式や表記ゆれといった地味なつまずきはありますが、乗り越えれば費用ゼロで意思決定の根拠が手に入ります。まずは手元の表を二つ、突き合わせてみるところから始めてみてください。
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この記事のような仕組み、自社にも入れられます
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