「在庫が多いのは分かっているが、どの店の、どの薬から減らせばいいのかが分からない」——多店舗を運営する調剤薬局から、よく聞く悩みです。今回は、都内で7店舗を展開する薬局グループの在庫を1枚のダッシュボードにまとめ、約3,000万円の削減余地を数字で見えるようにした事例を、つまずいた点まで含めて紹介します。
課題:在庫が「店ごとの勘」で管理されていた
各店舗がそれぞれのExcelで在庫を管理していて、グループ全体でいくら在庫を抱えているのか、どの薬が動いていないのかを横断で見る手段がありませんでした。棚卸しや発注はベテランの経験に頼っており、担当者が変わると精度が落ちる。よくある「属人化した在庫管理」の状態です。
やったこと:月次データを自動で1つに束ねる
各店舗のレセコンから出力される月次の在庫データ(Excel)を、スクリプトで1つのデータセットに正規化しました。その上で、次の4つの指標を自動計算するようにしています。
- 在庫残高:店舗別・グループ全体の在庫金額
- 在庫回転期間:その在庫が何ヶ月分に相当するか
- 不動在庫率:一定期間まったく動いていない在庫の割合
- 削減余地:適正水準まで下げた場合に浮く金額の目安
これを毎月、同じ手順で自動更新できるようにしました。人が電卓を叩く作業はゼロです。
つまずいた点
- 店ごとにフォーマットが微妙に違う:同じレセコンでも、出力の列名や並びが店舗ごとに揃っていませんでした。ここを吸収する変換を最初に作るのが肝でした。
- 品目名の表記ゆれ:同じ薬でも店ごとに書き方が違い、名寄せをしないと集計がずれます。
- 元データは絶対に壊さない:集計結果は必ず別ファイルに出力し、各店が使っている元のExcelには一切手を加えない設計にしました。
結果:削減の「順番」が数字で見えた
ダッシュボードにまとめた結果、グループ全体で在庫総額は約7,800万円、平均の在庫回転は約2.4ヶ月分、そのうち約23%が不動在庫という実態が見えました。適正水準まで寄せれば約3,000万円の削減余地があり、「どの店の、どの品目から手を付けるべきか」がランキングで分かるようになりました。
「なんとなく在庫が多い」という感覚が、「この店のこの棚から¥◯◯円分」という具体的な行動リストに変わったのが、いちばんの成果です。
この型が使える会社
複数店舗・複数拠点で在庫を持ち、いまはExcelや紙で店ごとに管理している——そんな中小企業なら、業種を問わず同じ型が応用できます。特別なシステムを新規導入しなくても、既存の出力データを束ねて自動集計するだけで、まず「現状を数字で見る」ところまでは到達できます。
※ 記載の数値は、実際の取り組みをもとにした概算です。
