「今年、採用にいくらかかった?」「1人採るのに、結局いくら?」——多店舗を展開する企業の採用担当なら、この質問にすぐ答えられずに詰まった経験があるはずです。応募は来る、面接もする、採用もできる。でも、どの段階で人が抜けているのか、1人採るのにいくらかかっているのかが見えない。見えないから改善のしようがない。今回は、その状態を1枚のダッシュボードで解消した企業の取り組みを紹介します。
課題:歩留まりも採用単価も、見えていなかった
多店舗展開するこの企業では、採用の数字がバラバラの場所に散らばっていました。
- 歩留まりが見えない:応募から面接、内定、採用まで、どの段階で何割が抜けているのかが分からない
- 採用単価が見えない:1人採用するのにかかった費用(CAC=採用単価)が集計できていない
- 媒体ごとの良し悪しが不明:複数の求人媒体を使っているのに、どれが効いているか比べられない
数字が見えないと、改善は「たぶんこの媒体が良さそう」という感覚頼みになります。打ち手の根拠がない状態でした。
やったこと:量・状況・費用を1箇所に集約した
取り組んだのは、バラバラだった3種類のデータを1箇所に集め、採用単価と各段階の歩留まりを1枚のダッシュボードで見られるようにすることでした。
- 量:応募数など、各段階を通過した人数
- 状況:候補者ごとに、いまどの段階にいるか
- 費用:媒体ごとにいくら使ったかの台帳
これらを突き合わせることで、「応募100人 → 面接何人 → 採用何人」という歩留まりと、「1人採るのにいくら」という採用単価が、同じ画面で見えるようになります。ファネル(応募から採用へと段階的に絞り込まれていく流れ)を、数字でたどれる状態にしたわけです。
つまずいた点
集約すると言うのは簡単ですが、実際には手間のかかる下ごしらえが必要でした。
- 費用台帳の整備:そもそも媒体ごとの費用がきちんと記録されていなかった。まず台帳の形を整えるところから始まった
- 個人情報の扱い:候補者ごとの情報を集約するため、誰が見られるか・どう保管するかの配慮が欠かせなかった
- 費用の按分:複数媒体にまたがる費用や、月をまたぐ費用をどう割り振るか。この按分(費用を条件に応じて分けること)のルールを決める必要があった
結果:詰まりどころが数字で見えるようになった
ダッシュボードができてからは、どの媒体・どの段階が効いていて、どこで詰まっているのかが数字で見えるようになりました。たとえば「応募は多いのに面接で大きく抜ける段階」や「単価は高いが採用まで至りやすい媒体」といった違いが一目で分かります。感覚ではなく数字で語れるようになったことで、採用の打ち手を判断しやすくなったのが最大の変化でした。
この型が使える会社
この仕組みは採用に限りません。ファネル(段階的な絞り込み)を数値で管理したい業務全般に応用できます。
- 複数の求人媒体を使い、どれが効いているか比べたい採用担当
- 応募から採用までの歩留まりを、店舗横断で把握したい多店舗企業
- 問い合わせから受注までの流れを数字で追いたい営業部門
始めるコツは、完璧なデータを待たないこと。まず費用台帳を整え、段階ごとの人数を数えるところから始めれば、粗くても全体の歩留まりが見えてきます。見え始めれば、どこを直すべきかは自ずと浮かび上がってきます。
※記載の数値は実際の取り組みをもとにした概算です。
