ネット広告に毎月それなりの金額を投じているのに、「本当にこの広告は効いているのか」がはっきりしない。今回ご紹介するのは、あるEC事業者が抱えていたそんなモヤモヤを、計測のやり方を見直すことで解消した事例です。原因は広告そのものではなく、成果を数える仕組みのほうにありました。専門的な話になりがちなテーマですが、できるだけ噛み砕いてお伝えします。
課題:広告の成果が、実際より低く見えていた
この事業者では、広告経由の購入や問い合わせ(CV=コンバージョン。購入や申込などの成果のこと)を、広告媒体(広告を配信するサービス)から渡されるデータで判断していました。ところが、その数字が実態より少なく出ているのではないか、という疑いが浮かびます。
- ブラウザ(インターネットを見るソフト)のCookie(クッキー=閲覧の記録)規制が進み、広告経由の成果が追いきれなくなっていた
- SNSアプリの中で開くブラウザ(アプリ内ブラウザ)だと、購入まで至っても計測から漏れやすい
- 成果が少なく見えるため、CPA(獲得単価=1件の成果にかかった広告費)が実際より高く算出され、広告の良し悪しを見誤っていた
やったこと:ブラウザ任せをやめ、サーバーから成果を送る
これまでの計測は、購入者のブラウザ側から「買いました」という信号を広告媒体へ送る方式が中心でした。この方式はブラウザの設定や環境に左右されやすく、漏れが避けられません。そこで、自社サーバー(サイトを動かしている裏側のコンピューター)側から、購入・申込の成果を広告媒体へ直接送る計測(サーバーサイド計測)を追加しました。
- 注文が確定したタイミングを、確実に把握できるサーバー側で捉えるようにした
- その成果情報を、ブラウザを経由せず広告媒体へ直接送る経路を用意した
- 従来のブラウザ計測は残したまま併用し、どちらか一方に頼らない形にした
つまずいた点
- 同じ1件の購入を、ブラウザ側とサーバー側で二重に数えてしまわないよう、成果に共通の識別番号を付けて重複を排除する設計が必要だった
- 氏名やメールアドレスといった個人情報をそのまま送らず、暗号化して復元できない形に変換してから渡す配慮が求められた
- 広告媒体ごとに送り方の仕様が違い、連携に使う権限や鍵(アクセスを許可する認証情報)の管理も媒体ごとに整える必要があった
結果
これまで取りこぼしていたCVが計測に載るようになり、成果の数字が実態に近づきました。結果としてCPA(獲得単価)も本来の水準に補正され、「どの広告が本当に効いているのか」が正しく比較できるように。広告予算をどこに寄せるかという判断の精度が上がり、感覚ではなく数字にもとづいて配分を決められるようになりました。
この型が使える会社
- ネット広告に毎月一定額を投じているが、その成果が正しく測れている自信がないEC・サービス業
- 広告媒体の管理画面に表示される成果件数が、実感より少ないと感じている会社
- アプリ内ブラウザやCookie規制の影響で、計測漏れが起きていそうな会社
広告の成果が正しく測れていないと、良い広告を「効いていない」と判断して止めてしまったり、逆に無駄な広告に予算を寄せ続けてしまったりします。広告そのものを見直す前に、まず「成果を正しく数えられているか」を疑ってみる。今回の事例は、計測という土台の見直しが、広告全体の判断を立て直す起点になりうることを示しています。
